サタルニア西部領域図についての説明
2021-10-05 20:26:02
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(サタルニアの西の果て)


⬜︎ヴァンリゲン峠とヴァンリゲン街道⬜︎

 【ヴァンリゲン峠】を挟んで、東に【ヴァンリゲン城】、西に【アルヴ村】がある。
 ヴァンリゲン峠は分水嶺になっており、ヴァンリゲン城からほぼ真東に【サム川】が流れる。
 サム川の北岸に古い街道があり、サタルニア国の首都【プラガ】まで続く。
 南側にも新道があるが、日当たりが悪く雪が積もりやすく溶けにくいため、北岸の古道の方が使われる。
 アルヴ村からほぼ真西に流れる【テム川】は【クルースタード】で【オン川】に合流する。
 クルースタードからプラガまで続く東西の街道を【ヴァンリゲン街道】と呼ぶ。
 日当たりがよく進みやすいヴァンリゲン街道は、軍事的に利用価値が高く、サタルニアの安定に大きく貢献している。
 ヴァンリゲン峠自体は整備の困難な難所である。それゆえに、ヴァンリゲン峠以西からの侵略に対して自然要塞の働きを期待されており、ヴァンリゲン峠の東にヴァンリゲン城が建設される一方、ヴァンリゲン峠の西斜面の軍事的開発は意図的にされていない。

⬜︎ディネーラ湖⬜︎

 テム川が合流したオン川は、マンダール国やペルルバンド国の支配する山岳地帯を南に向かって流れ、オーデン国の平野を潤し、オビオン湾に注ぐ。
 テム川とオン川の合流地点であるクルースタードから北へ1ニーダラ(約100km)ほどの場所に【ディネーラ湖】があり、オン川はこの湖を水源とする。
 ディネーラ湖には周辺の山岳地帯から多くの川が流れ込んでいる。
 ディネーラ湖の北岸はロマルプ、南西岸はマンダール、東岸はサタルニアが支配している。
 北東岸にはロマルプの【ヴィリエスタルク城】、北西岸にはロマルプの【ディネーラ城】、ディネーラ城の南から西方へ流れ出る【カノン川】を挟んだ対岸にはマンダールが庇護する商業都市【カノンクール】、南岸にはマンダールの【ペッパルコルン】、東側はサタルニアの【ドロームスク城】があり、互いを監視しながら政治的均衡を保っている。
 現在は三国の関係は安定しており交易が盛んに行われている。

⬜︎花瓶(ヴァーセン)街道⬜︎

 【ロカルト大峠】は、オーデンとサタルニアの国境にある歴史ある大峠。7つの村から成り、村々は非常に結びつきが強く、誇り高い。峠の維持整備を積極的に行い、ロカルト七星と自称する。
 ロカルト峠は政治的に中立を自称するが、気質的にも言語的にもサタルニア山岳地域の人間とみなしてよく、税もサタルニアに納めている。

 【オムテンクサム】とは「サム川に架かる橋」の意味と伝えられる。
 南のオーデンから、ロカルト峠を超えて、北のロマルプに至る、南北交易路の中継都市として古代から栄えた。
 サタルニア西部山岳地域の中心都市である。
 周辺地域から産出した鉱物を加工した金属加工業が盛んな他、歌舞芸術の集積地となっており、劇場が多くある。
  オムテンクサムの西方1ニーダラ(約100km)にヴァンリゲン城、北方1ニーダラにロマルプの【メーリッド】、南方1ニーダラにオーデンの【ボーマルケン】、北東2ニーダラにサタルニアの【サルスカプリグ】がある。

 オーデンの【トンセッタ村】からロカルト峠を越えてオムテンクサムに至り、【ティドヴァッテン村】、ロマルプの【フォリエフォルム村】に至る道を【花瓶(ヴァーセン)街道】と呼ぶが、その名の由来は知られていない。

⬜︎エルタサンデ険道⬜︎

 ヴァンリゲン城の東の村【エルタパッド村】から、南西に延びる渓谷を遡って、ヴァンリゲン峠を南に大きく迂回して、分水嶺を越え、そこから北西へ渓谷を降り、アルヴ村の西の【ブルサンデ村】に降りる山越えの道もある。谷川沿いに集落が12ある。
 ヴァンリゲン峠に比べると道程は長く、馬が使えないので、基本的に歩荷となる。
 集落は貧しく、旅人に分け与えるだけの補給品が満足に揃わないことがあるので、あらかじめ山麓で食料などの装備を整えなければならず、そうすると運搬できる物資は限られてしまう。このため商用にはあまり向かない。
 正式な名前はないが便宜的にエルタ=サンデ険道やブル=パッド険道と呼ばれる場合がある。

⬜︎グドタクバル⬜︎
 
 エルタパッド村の南の谷川【グルンドタール渓谷】を遡ると【グドタクバル村】に至る。
 グドタクバル村から南のオーデンに抜けることも可能だが、ロカルト峠の村々とは違い、この谷の村人は旅人とあまり関わらないし、山道の整備もされていない。
 この静かな渓谷にはかつて怪物が住んでいたが、この地に移住を希望するある氏族がこの怪物を倒しこの渓谷に住むようになった。
 その際に氏族の半数が死んだことをサタルニア西部山岳人は忘れない。
 酒場などでその英雄的な戦いと同胞の死の歌が歌われると、酔っ払いの乱暴者でもしんみりとしてしまう。

⬜︎ペルルバンド公国⬜︎

 クルースタードからテム川を挟んで南の対岸の土地。西にはオン川が流れ、その向こうはマンダール荘園国である。
 オン川と東の山地との間に耕作可能な土地があり、南風も吹いて比較的温暖である。
 ただし、オン川の洪水と付き合っていかなければならない土地である。
 ペルルバンド公爵は、かつてプラガ近郊に大所領地を持っていたが、政変があったため、現在はこの小さな土地がすべての所領である。
 【パッセラード】が中心都市だが、山の上に小さな石の城があり、ペルルバンド公爵はそこに住んでいる。

⬜︎サタルニア西方地域の北方境界⬜︎

 ディネーラ湖に面したサタルニア国の支配地は、オン川以東、【トヴェレン川】以南である。
 トヴェレン川はヴァンリゲン峠付近を水源として北周りに大きく蛇行しながらディネーラ湖に流れ込む川である。
 ヴァンリゲン峠以東の北方境界については、【ガルニデ村】と【ティドヴァッテン村】がサタルニアの北限の村である。ガルニデ村とロマルプの【エーゲンダム村】、ティドヴァッテン村とロマルプの【フォリエ-フォルム村】の間の峠を国境とする。

⬜︎塩鉱の発見⬜︎

 【ヴィスパード村】の南の谷川【クングスフォルス渓谷】は鉱山開発が進んでいたが、塩鉱が新たに発見された。
 【トッピグヘート】で産出した塩をヴァンリゲン峠を通して西方に運ぶと大変儲かったので、ヴァンリゲン峠は大いに賑わい、空前の好景気となった。


⬜︎度量衡⬜︎
 この世界では、人間は脈を4拍打つうちに、呼吸を1回すると考えられている。時の単位は呼吸の数や脈の数と、日時計、線香時計、教会や城が打つ時報の鐘の数、農業用の暦が併用されて表現される。
 長さの単位は、車軸の長さ(フィクサ)や車輪の円周の長さ(リル)を基準にしたものが普及し、平地では使用されているが、サタルニア西方の山岳地域では一般には使用されていない。
 英雄の足裏の横幅(ディンパ)、縦幅(ドリクサ)、英雄の一歩と伝えられる長さ(パヴィス)を基準とした単位のほか、一般的な大人の肘から指先までの長さ(フラクタ)、両手を水平に広げた時の指から指までの長さ(フルタルプ)を基準とした単位が使われている。
 サタルニアでよく使われている長距離の単位として、英雄が夏至の日の日中に一日で歩む距離(ニーダラ)がある。サタルニア西部高地の人間は1ニーダラをヴァンリゲン峠からオムテンクサムまでの距離と考えており、これは他の地域の1ニーダラとおおよそ一致する。感覚的に成人男性が歩いて三日かかる距離として使われている。

 


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サタルニア領域図


⬜︎サタルニア西部山岳地帯の位置付け⬜︎

 サタルニア印章国の西の果ての山岳地帯は、古くは、古代王国の言葉で舞台という意味の「スケーデ」、あるいは単純に「高地」「山地」「舞台地方」と呼ばれていた。
 サタルニア印章国が台頭しこの土地を併合するようになってからは、「西サタルニア」「高地サタルニア」「サタルニア舞台地方」でも通じる。

 南のオーデン、北のロマルプという、二つの強国に挟まれた地域だが、いくつかの理由があり両者に併合されたことはない。

 一つ、この山岳地域が広すぎること。
 一つ、山岳地域の人間を手なずけることが平地の人間には難しいこと。
 一つ、軍事的に侵略したり、占領後に防衛・統治し続けることが難しいこと。
 一つ、オーデンもロマルプも広大な平野を擁し大海に港を持つ強国であり、この地で産出するものは交易で入手可能であること。
 一つ、オーデンとロマルプが互いに隣接することを望んでいないこと。

 サタルニア印章国において、サタルニア西部山岳地域は最後に併合された土地である。
 しかし、サタルニアの祖王は、サタルニア西部山岳地帯に連なるサタルニア中部山岳地帯の塩都【サルスカプリグ】の守護者であったため、山岳人の気質には通じており、サム川の重要性から、長くオムテンクサムとも良好の関係を保ち続けてきた。
 そのため、サタルニア西部山岳地帯の古き氏族にとって、サタルニア国王は、大出世した幼馴染のような感覚であり、親しまれ、頼られている。
 サタルニア山岳地域は、古き氏族も新しい流れ者も多く抱えた混沌の地であるが、「サタルニアの山岳地域に住む我々」という意味で、サタルニア人と自称することがある。
 一方で、サタルニアは、サルスカプリグから東の低地へ侵略を進める際に、低地貴族たちを配下に編入するにつれ、その文化や価値観の影響も多く受けてきた。
 そのため、低地的な支配関係の強要が山岳地域に向けられることもたびたびあったが、その度に高地サタルニアは反発し、野蛮な解決方法をもって低地を従わせてきた。
 このため、この血を吸った山岳地域を、赤い印泥を塗った印章に見立てて、「血塗られたサタルニア印章」と呼んだ人がいたが、それが時のサタルニア王の耳に入って、王が痛く気に入り、サタルニア印章国と自称することになった。

 ヴァンリゲン峠からオムテンクサムまで1ニーダル、オムテンクサムからサルスカプリグまで2ニーダル、サルスカプリグからプラガまで3ニーダルである。

⬜︎サルスカプリグの位置付け⬜︎

 サルスカプリグで産出・製塩された岩塩は、サム川を通じて東方はプラガやその更に東の地域、北方は南部ロマルプ地方全域に運ばれた。


⬜︎ディネーラ湖の塩の変⬜︎

 ディネーラ湖北岸をおさめるヴィリエスタルク伯は、サルスカプリグの塩をマンダールやドロームスクにさえおろして利益を得ていた。
 トッピグヘートで岩塩が産出するようになり、ヴァンリゲン峠を通してドロームスクやマンダールに塩が行き渡るようになると、今度はヴェリエスタルク伯がかつて売っていた人間から塩を買う番となった。


⬜︎マンダール荘園連合の位置付け⬜︎

 マンダール荘園連合は、東をサタルニア西部山岳地帯に、西をトュルスタ東部山岳地帯に挟まれた谷間の土地である。マンダール自体も国土のおよそ半分は山地であるが、残り半分はまとまった平地であり、耕作可能な土地が少ない高山帯において貴重な農業国である。
 古代帝国の時代に、このマンダール大渓谷には皇帝直轄の荘園がいくつも作られた。古代帝国滅亡後は独立した荘園や農村となった。
 ただし、守りにくく攻めやすい地理的条件であったので、長い間この地は戦乱が絶えなかった。
 苦しんだある荘園の領主が、荘園を教会に寄進したところ、様々な事情から侵略者たちが荘園を諦めたため、教会に荘園を寄進する領主が増え、領土として安定し、寄進荘園がお互いに連携するようになり、一つの国として独立した自我を持つようになった。
 農作物やその加工品を周辺の山岳地帯に輸出することが主な産業であるが、教義の制約で僧侶は商売ができないため、商業都市【カノンクール】に一度輸出品を集積し、そこで輸出品の競りが行われている。
 教会の権威による牽制は万全ではない。軍事的な設備や展望は十分とは言えないが、外交政策で補っている。サタルニア印章国がこの土地を狙っている。